スーパーで走り回る。順番を待てない。あいさつができない。まわりから向けられる視線に、「しつけがなっていないと思われている」と、身が縮む思いをしたことはないでしょうか。そして家に帰ってから、「私のしつけが、足りないのだろうか」と、自分を責める。そんな気持ちで、ここにたどり着いたのかもしれません。
先にお伝えします。「しつけされていない子」に見える行動だけで、しつけの不足や、親の愛情を判断することはできません。年齢や発達の段階、その子の気質、その日の体調や環境など、いくつもの要因が重なっていることがあります。この記事では、そう見られやすい姿を整理したうえで、その裏で実際に何が起きているのかを、一緒に見ていきます。
「しつけされてない子」として語られやすい姿
まわりから「しつけがなっていない」と見られやすいのは、たとえば、次のような姿です。
- 公共の場で走り回る、大きな声を出す
- 順番を待てない、割り込んでしまう
- あいさつやお礼が、うまく言えない
- 気に入らないと、その場で大声で泣いたり怒ったりする
- 物を乱暴にあつかう
どれも、これまで何度も声をかけ、工夫してきたことかもしれません。それでも外で起きると、「自分のしつけが悪いのでは」と思わされてしまう。けれど、同じ行動でも、その裏で起きていることは、子どもによってちがいます。
その行動の裏で、起きていること
「しつけされてない子」に見える行動の背景には、次のようなことが重なっていることがあります。
- 年齢や発達の段階:小さな子どもが、じっと待てなかったり、静かにできなかったりするのは、「その年齢では、まだ難しい」ことがよくあります。しつけだけの問題ではなく、これから育っていく途中だ、ということです。
- その子の気質や特性:刺激に敏感だったり、衝動をおさえるのが苦手だったり、あいさつのタイミングがつかみにくかったり。生まれ持った特性が関わっていることもあります。
- その日の体調や状況:疲れている、お腹がすいている、慣れない場所で不安。そうした条件が重なると、いつもならできることも、できなくなります。
つまり、目の前の行動を「しつけがされていない」と決める前に、今、その場面で、うまくできる条件が整っていたかを見る必要があります。
「しつけ」=厳しく叱ること、ではありません
もう一つ、大切なことがあります。「しつけ」を、「厳しく言い聞かせること」「叱って従わせること」だと考えると、苦しくなります。
強く叱れば、その場の行動が止まることはあります。ただ、それだけでは、「なぜそれがいけないのか」「次はどうすればよいのか」まで理解するのが難しいこともあります。こども家庭庁は、体罰や暴言は子どもの心身を傷つけ、繰り返されると、成長・発達にさまざまな悪影響が生じる可能性があると伝えています。
しつけは、本当に必要なのでしょうか
社会の中で人と一緒に生きていく以上、守らなければならないルールはあります。道路に飛び出さない。人を傷つけない。順番を守る。子どものうちから、その理由を少しずつ理解できるように伝えていくことは、大切です。
ただ、「ルールを教えること」と、「親の考えで子どもを縛ること」は、同じではありません。もちろん、危険が迫っている場面では、理由を説明する前に、まず止めなければならないこともあります。時間に追われていれば、「今は言うことを聞いて」と言いたくなる日もあるでしょう。それでも、親の答えに従わせることだけが続けば、子どもが自分で考え、選ぶ機会は少なくなってしまいます。
本当に育てたいのは、親が見ているときだけルールを守る姿でしょうか。それとも、なぜそのルールが必要なのかを考え、親がいない場所でも、自分で行動を選べる力でしょうか。
必要なのは、ルールをなくすことではありません。ルールに従わせるだけで終わらせず、その理由を伝え、子ども自身が考える余白を残すことです。しつけの目的は、親の思いどおりに動く子にすることではなく、いつか親の手を離れたときに、自分で考え、人とともに生きていける力を育てることではないでしょうか。
まわりの目に、あなたの子育てを決めさせない
まわりの「しつけがなっていない」という視線は、その一場面だけを切り取ったものです。あなたが、日々どれだけ声をかけ、向き合ってきたかは、その一瞬には映りません。一つの場面の姿と、あなたの子育て全体を、混同する必要はありません。
その子は、今はまだできなくても、これから育っていきます。まわりの評価より、その子のペースと、家での積み重ねのほうを、真ん中に置いていいのです。
家でできること
叱って直そうとするより、その子が「できる条件」を整えるほうが、うまくいきやすくなります。
たとえば、してほしいことを、否定形ではなく肯定形で、具体的に伝える。「走らないで」より「ここは歩こうね」。長い指示は、一つずつに区切る。疲れや空腹が重なる時間帯や場所を、あらかじめ避ける。そして、小さくても、できたことを具体的に認める。「順番、待てたね」と。うまくいかない日があっても大丈夫です。完璧を目指すより、その子に合った関わりを、一つずつ試していくくらいで十分です。
そのうえで、園や学校でも困りごとが続く、本人や周りにとって危険な行動がある、あるいは、あなた自身が疲れ切っているときは、家庭だけで抱えなくてかまいません。園・学校の先生や、自治体の子育て・発達相談の窓口、かかりつけ医などに、今の様子をそのまま話してみてください。
よくある質問(FAQ)
「しつけされてない子」に、決まった特徴はありますか。
決まった特徴があるわけではありません。走り回る、順番を待てない、あいさつができないといった姿は、年齢や発達、その子の気質、その場の状況によって現れるもので、「しつけ不足」の証明ではありません。同じ行動でも、背景は子どもによってちがいます。
子どもがそうなのは、しつけが足りないからでしょうか。
そうとは限りません。走り回る、待てないといった行動だけで、しつけの不足や親の愛情を判断することはできません。年齢や発達、その子の気質、その日の体調や状況などが関わっていることがあります。自分の育て方を責めるより、どんな場面で難しくなるのか、何があるとできるのかを見てみてください。
どうすれば、いいのでしょうか。
叱って従わせるより、その子ができる条件を整えるほうが、近道になることが多いです。肯定形で具体的に伝える、やることを区切る、疲れや空腹の時間を避ける、できたことを認める。時間をかけて繰り返す中で、少しずつ身についていきます。うまくいかない日があっても、あなたの関わりが無駄になるわけではありません。
読み終えたあなたへ
まわりの視線に、何度も肩身のせまい思いをしてきたのだと思います。でも、その子が今できないことは、あなたのしつけが足りない証拠でも、愛情が足りない証拠でもありません。その子は、まだ育っている途中にいますし、その場面では、うまくできる条件が整っていなかったのかもしれません。まわりの評価ではなく、その子のペースを見て、家での関わりを、少しずつ続けていってください。その積み重ねは、ちゃんとその子の育ちにつながっていきます。
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