言ったあとで、しまった、と思う。夜、寝顔を見ながら、昼間の強い一言を思い出して、胸が痛くなる。そんな夜を過ごしたことは、ないでしょうか。もう言わないと何度思っても、疲れや焦りが重なると、また同じ言葉が出てしまう。そのたびに、「私はこの子を傷つけているのではないか」と苦しくなることもあると思います。
まず、よく「言ってはいけない」とされる言葉を10個、はっきりお伝えします。そのうえで、10個を丸暗記するよりずっと役に立つ、ある見方を一緒に見ていきます。それが分かると、リストにない言葉についても、自分で気づけるようになります。
子どもに言ってはいけない言葉10選
一般に、次のような言葉は、子どもの心に残りやすいと言われています。
- 「産まなきゃよかった」など、存在そのものを否定する言葉
- 「ダメな子ね」「どうしてできないの」など、人格を決めつける言葉
- 「もう知らない」「勝手にしなさい」など、見捨てるように聞こえる言葉
- 「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」と、役割を押しつける言葉
- 「〇〇ちゃんはできるのに」と、ほかの子と比べる言葉
- 「早くしなさい」と、急かし続ける言葉
- 「〜しないと置いていくよ」など、脅して従わせる言葉
- 「泣かないの」と、感情を止めようとする言葉
- 「男の子でしょ」「女の子なんだから」と、らしさを押しつける言葉
- 「今忙しいから、あとにして」と、拒み続ける言葉
こうして並ぶと、自分が口にした言葉を見つけて、胸が苦しくなる人もいるかもしれません。けれど、ここで見たいのは、言ってしまった言葉の数ではありません。その言葉が出る前に、親子の間で何が起きていたのかを、一緒に見ていきます。
10の言葉を見る鍵は、「子どもの何を閉じるか」
この10個を一つずつ覚えるのは大変です。それに、10個の重さは、同じではありません。「産まなきゃよかった」と「早くしなさい」では、子どもに残るものがまったく違います。大切なのは、言葉そのものだけを見ることではなく、その言葉によって、子どもの何が閉じられたのかを見ることです。
そう見ると、10個は次の4つに整理できます。
- 存在や人格を否定する言葉(1・2):自分は生まれてよかったのか、自分はダメな子なのか、と感じさせる
- つながりを切る、脅かす言葉(3・7):見捨てられるかもしれない、という不安を残す
- 感情・声・その子のペースを止める言葉(6・8・10):自分の気持ちや話は受け止めてもらえない、自分のペースは待ってもらえない、と感じさせる
- その子らしさを役割や比較で覆う言葉(4・5・9):ありのままの自分ではダメなのか、と感じさせる
すべてが、同じ重さではありません。とっさに出た「早くしなさい」の一言で、その子の何かが決まってしまうわけではないのです。見たいのは、その言葉が、子どもの何を閉じかけたのか。そこに目が向くと、リストにない言葉でも、自分で気づけるようになります。
どうして、いけないと分かっていても出てしまうのか
言ってはいけないと、頭では分かっている。それでも、つい口から出てしまう。強い言葉が出る直前、何が重なっていたでしょうか。出発の時間が迫っていた。家事も支度も、一人で抱えていた。何度呼ばれても、代わってくれる人がいなかった。言葉だけを見ると母親の問題に見えても、その一言の前には、ほかの言葉を探す余裕を失うほど追い詰められた状況が、あることがあります。
心に余白があるときは、「片づけようね」と言えても、余白がなくなると、いちばん短くて強い言葉が先に出てしまう。だから、言葉づかいだけを直そうとするより、自分の余裕が、どんなときに底をつくのかを知っておくほうが、役に立ちます。
完璧に言わないことより、言い直せること
ここで、少し肩の力を抜いてほしいことがあります。毎日、一度も強い言葉を言わずに過ごすのは、簡単なことではありません。目指したいのは、完璧に言わないことではなく、言い過ぎたあとに、結び直そうとすることです。
強く言ってしまったと気づいたら、あとからでも「さっきは言いすぎたね」と伝えて、子どもの気持ちを聞いてみる。ただ、言い直しても、子どもの気持ちがすぐに戻らないことはあります。返事をしてくれない日もあるかもしれません。それでも、言い過ぎたことを認め、子どもの気持ちを聞こうとすることは、関係を結び直す一歩になります。言い換えの引き出しも、少しあると助かります。「どうしてできないの」を「どこで困っている?」に、「早くしなさい」を「あと5分で出るよ。何を手伝おうか」に。すぐには変わらなくても、重ねること自体に意味があります。
強い言葉が、自分でも止まらないと感じたら
もし、強い言葉が止められない、言ったあとも気持ちが収まらない、子どもと二人でいるのがつらい、と感じているなら、それは、あなたが一人で抱えられる量を超えているのかもしれません。自分だけで何とかしようとせず、いまの状態を、そのまま話せる場所があります。
子育てや親子関係について話したいとき
- 親子のための相談LINE:保護者も、子育てや親子関係について相談できます。
- 児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」:子育ての悩みを、無料で相談できる全国共通の番号です。
子どもを傷つけてしまいそう、子どもの安全が心配なとき
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」:すぐに児童相談所につながる、全国共通の番号です。
よくある質問(FAQ)
もう何度も言ってしまいました。手遅れではないですか。
一度言った言葉を、なかったことにはできません。それでも、そのあとに重ねる言葉や関わりで、子どもの受け取り方は少しずつ変わっていきます。「さっきは言いすぎた」と伝え直す。その積み重ねが、これからの関係を形づくっていきます。
つい、ほかの子と比べてしまいます。
比べたくなったとき、その奥には、どんな不安があったでしょう。「このままで大丈夫だろうか」「遅れているのではないか」。その不安に気づけると、比べる代わりに、「今日は自分から靴を履いたね」のように、目の前の姿をそのまま言葉にしやすくなります。
とっさに、いい言い換えが思いつきません。
その場でうまく言い換えられなくても、大丈夫です。言葉が出てこないときは、無理にひねり出さず、一度深呼吸するだけでも構いません。あとから「さっきはきつく言っちゃったね」と一言添える。それも、立派な結び直しです。
読み終えたあなたへ
今日、すぐに言葉づかいを変えなくてもかまいません。まずは、自分がどんなときに強い言葉が出やすいのかを、一つ知っておく。出発前の慌ただしい時間なのか、疲れがたまった夜なのか。それが見えていると、同じ場面が近づいたとき、少しだけ身構えられます。言葉は、その積み重ねの先で、ゆっくり変わっていきます。
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