うまくいかない一日の終わりに、「私は、子育てに向いていないのかもしれない」と思うことがあります。子どもにイライラしてしまう。まわりの親のように、うまくやれない。こんな自分が親でいいのだろうか——。そう思うほど、思いどおりにならない日を、何度もくぐってきたのかもしれません。ここでは、「子育てに向かない人はいるのか」という問いを、少し違う角度から見ていきます。

結論——「向かない要因」はあっても、それだけで「向かない人」とは決められない

結論からいうと、子育てで苦労しやすい要因を持つ人は、たしかにいます。たとえば、音や急な予定変更が苦手だったり、いくつものことを同時に進めると強く疲れたり。でも、そうした要因があるからといって、「この人は子育てに向かない」と決めることはできません。子育てのしんどさは、その人の特性だけでなく、睡眠、頼れる相手、経済的な余裕、子どもの気質など、いくつもの条件によって変わるからです。

こども家庭庁の資料でも、親に否定的な感情が生じる背景として、子どものことだけでなく、親自身の体調の悪さや忙しさ、孤独感、時間や心の余裕のなさが挙げられています。また、周囲に頼れる人がいないことや、サポートを得られないことも、保護者の負担の背景とされています。

こうしたことからも、子育てのしんどさを、その人の「向き不向き」だけで説明することはできません。今「向いていない」と感じているのは、あなたという人間の判定ではなく、今の心身の状態や周囲の条件が重なって、負荷が大きくなっているサインかもしれません。

「向いていない」と感じる背景には、今の状態がある

同じ人でも、子どもに余裕を持って接することができる日と、「向いていない」と感じる日があります。その差に大きく関わっているのが、その日の心身の余力と、周囲の状況です。

眠れているか。頼れる人がいるか。自分の時間が少しでもあるか。子どもの気質と、たまたま相性が合うか。これらがそろっているときは、余裕を持って接することができます。逆に、寝不足が続き、一人で抱え、気の休まる時間がなければ、どんな人でも、優しさや忍耐は底をつきます。「向いていない」と感じるとき、多くの場合、足りないのは適性ではなく、余力と支えのほうです。

「向いていない」を、具体的な場面に分けてみる

「子育てに向いていない」と感じるのは、どんなときでしょうか。朝の支度が進まないとき。何度言っても片づけないとき。きょうだいげんかが始まったとき。

場面を一つに絞ってみると、見えてくるものが変わります。「自分が親に向いていない」という大きな問題ではなく、時間が足りない、音や泣き声で余力が削られる、役割が一人に集中している、といった具体的な要因が見えてきます。変える場所は、あなた自身ではなく、その場面で負担を生んでいるもののほうかもしれません。

「向いているように見える親」にも、見えていない条件がある

そもそも、私たちが「あの人は子育てに向いている」と言うとき、何を見ているのでしょうか。いつも穏やかで、余裕がありそうな親。でも、その余裕が、その人の性格だけで生まれているとは限りません。

よく眠れている。パートナーや親が手伝ってくれる。経済的に切羽詰まっていない。子どもの求める関わり方と、その親の得意な関わり方が、たまたま合っている。そうした条件が重なれば、多くの人は「向いている親」のように見えます。私たちが見ているのは、その人の生活のほんの一場面です。見えている誰かの穏やかな一場面と、自分の一日全部を比べて、自分を責める必要は一切ありません。

それでも「向いていない」と苦しいときにできること

とはいえ、そう言われても、つらさがすぐに消えるわけではありません。できることがあるとすれば、「向くように自分を変える」ことではなく、あなたが置かれている状況を、少しでも楽にしていくことです。

まず、「いちばん苦しくなる場面」を一つだけ選んでみます。その場面で足りないのは、時間でしょうか。人手でしょうか。静けさでしょうか。自分だけでは分からないときは、保健師や園・学校の先生に、その場面をそのまま話してかまいません。「何を変えればいいのか分からない」というところから、相談して大丈夫です。変えるのは、あなたの適性ではなく、その場面で負担を生んでいるもののほうです。

気をつけたいのは、向き不向きより「今の状態」

「向いていない」という言葉で、本当は別のつらさを抱えていることもあります。眠れない、涙が止まらない、子どもをかわいいと思えない、消えてしまいたい。そういう状態が続いているなら、それは「向き不向き」の問題ではなく、あなた自身が助けを必要としているサインです。

「消えてしまいたい」「子どもを傷つけてしまうかもしれない」という気持ちがあるときは、一人で抱えないでください。次の窓口が、あなたの側に立ってくれます。

よくある質問(FAQ)

子育てに向かない人は、いるのでしょうか。

「子育てに向かない人」と、その人全体を判定できるものではありません。特性によって苦手になりやすい場面はありますが、それは親として不適格という意味ではありません。子育てのしんどさは、睡眠や支え、経済的な余裕、子どもの気質など、いくつもの条件で変わります。「向いていない」と感じるのは、あなたの人間性ではなく、あなた自身の心身の状態と、周囲の状況が重なっているサインであることが多いです。

向いていないと感じます。親をやめたほうがいいのでしょうか。

「親をやめたい」と思うほど追い詰められているのなら、今は向き不向きの答えを出すより、あなたが一人で抱え続けないことが先です。多くの場合、足りないのは適性ではなく、余力と支えです。何を減らせるのか分からないときは、上にある窓口へ、そのまま話してかまいません。一人で判断せず、まず一度、外に声をかけてみてください。

どうすれば、子育てに向くようになりますか。

「向くように自分を変える」より、負担を生んでいる条件を少し動かすほうが現実的です。眠れる時間を少しでも増やす、負担を分ける、完璧を目指さない。こうして周りの状況が変わると、同じあなたでも、子どもへの接し方は変わっていきます。問題は、あなたの資質ではなく、あなたが置かれている状況のほうかもしれません。

読み終えたあなたへ

「子育てに向いていない」という言葉で、自分全体を判定しなくてかまいません。それは、今のあなたに、余力や支えが足りていないサインかもしれません。向き不向きを問い直すより、あなたの状況を少しでも楽にすることのほうに、目を向けてみてください。今日すぐに、何かを変えなくてかまいません。まずは、ここでひと息ついて、自分を責める手を、少しだけ止めてください。

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※参考:こども家庭庁「体罰等によらない子育てのために」

※相談窓口:児童相談所虐待対応ダイヤル189よりそいホットライン

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