もし今、子どものために何かを増やさなければ、と思っているなら。新しい教材や声かけを足す前に、一度だけ見てほしいことがあります。「あの子は地頭がいい」と聞くたび、うちの子は大丈夫だろうかと不安になる。そんなときに見落としやすいものを、ここから見ていきます。

「地頭」は、はっきり測れる言葉ではありません

「地頭」は、専門的な検査で一つの数値として測れる能力ではありません。この記事では、初めてのことに出会ったとき、自分なりに考え、試し、考え直す力、という意味で使います。

そのため、いくつかの特徴に当てはまるかどうかで、「地頭がいい子」「よくない子」と分けることはできません。そして、もう一つ。子どもの考える力は、お母さんの関わり方の成績表ではありません。忙しくて質問を切り上げた日があっても、すぐに答えを教えたことがあっても、それだけで子どもの力が決まるわけではありません。

子どもの「考える力」が見える5つの場面

考える力そのものは、数値では見えません。でも、それが表に出てくる場面はあります。たとえば、こんなときです。

  1. 「なぜ?」「どうして?」と、理由を知りたがっているとき
  2. 覚えた言葉ではなく、自分の言葉で説明しようとしているとき
  3. 知ったことを、別のことと結びつけて話すとき
  4. 遊びや失敗の中から、自分なりの工夫を見つけたとき
  5. 答えがすぐに出なくても、しばらく考え続けているとき

これらは、地頭のよさを判定するチェック項目ではありません。考える過程が、外から見えやすい場面です。反対に、これらが見えないからといって、考えていないとは限りません。答えるまでに時間がかかる子、人前では言葉が出にくい子、間違えるのが怖くて黙る子もいます。外からは見えない形で、考えている可能性もあります。

地頭を見極めるより、「考える力が出る条件」を探す

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。見たいのは、子どもの能力が高いか低いかではなく、その子の考える力が、どんな条件で表に出てくるか、です。

同じ子でも、力が出る場面と、出にくい場面があります。

  • 一人で、じっくり遊んでいるとき
  • 好きなことに、向かっているとき
  • 時間を急かされていないとき
  • 「正解を出さなきゃ」と気負っていないとき
  • お母さん以外の大人と、過ごしているとき
  • 疲れていない時間帯
  • 言葉より、絵や工作で表すほうが合っているとき

「なぜと聞かないから、地頭がよくない」と決める代わりに、こう見てみる。この子は、どこで、誰と、何をしているときに、自分なりの工夫を始めるのだろう、と。

考える力を支える働き(集中する、気持ちを切り替える、順序立てる、など)は、家庭だけでなく、園や学校など、日常的に過ごす複数の場所から育っていきます。そして、強いストレスがかかっているときは、持っている力も出にくくなります。子どもの考える力の育ちを、家庭の声かけだけで背負わなくていいのです。

「地頭がいい子の親の特徴」とは、何をするかではなく、どう見るか

「地頭がいい子の親には、特徴がある」とも、よく言われます。ただ、それは特別な教育法や、上手な声かけのことではありません。ここで注目したいのは、親の性格や声かけの上手さではなく、子どもの見方です。子どもを「賢いか、そうでないか」で測らず、その子が自分なりに考え始める場面を知っている。うまく質問できた日も、できなかった日もありながら、判定を急がずに見ている。特別な家庭にしかできないことではありません。

IQと地頭は、同じものさしではありません

「IQの高い子の特徴」を探して、ここへたどり着いた方もいるかもしれません。IQは、標準化された検査を通して、複数の認知的な力を捉えるための指標です。一方、「地頭」には、統一された測り方や定義がありません。そのため、IQと地頭を、単純に高い・低いで対応させることはできません。

数値は、その子の一面を映すことはあっても、考える力の全体を映すものではありません。

見極めるのを、いったんやめてみる

「地頭がいい子」という言葉は、これからも目にするかもしれません。その言葉に我が子を当てはめて、安心したり不安になったりしなくて大丈夫です。判定するより、その子の考える力が、どこで、どんなふうに出てくるのかを見る。それは、賢さを増やす作業ではなく、その子をよく知っていく時間です。

よくある質問(FAQ)

地頭は、遺伝で決まるのでしょうか。

知的な力の個人差には、生まれ持った要因と、育つ環境の両方が、複雑に関わっています。親の特定の声かけだけで、決まるものではありません。「遺伝だから仕方ない」とあきらめる必要も、「全部育て方次第」と気負う必要もありません。

学力が高い=地頭がいい、ということですか。

学力と、一般に「地頭」と呼ばれるものには、重なる部分があります。テストの点には、知識だけでなく、問題を読み取る力や、その日の体調、慣れなども影響します。点数だけで考える力の全体は分かりませんが、まったく別のものとも言い切れません。

特徴に当てはまりません。うちの子は、地頭がよくないのでしょうか。

そうとは限りません。先に書いたとおり、考える力が表に出る場面は、子どもによって違います。今は静かに見える子が、好きなことを前にすると、思いがけない工夫を始めることもあります。当てはまる数ではなく、その子が動き出す場面を探してみてください。

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