我が子のある行動を見て、ふと不安になる。試すようにわざと困らせる、やたらと甘える、あるいは妙に手がかからない。もしかして、私の愛情が足りていないのだろうか——そんなふうに、自分を責めそうになる夜は、ないでしょうか。
「愛情不足のサイン」として紹介されることの多い行動があります。まずそれを整理したうえで、そのサインをどう受け取ればいいのか、一緒に見ていきます。先にお伝えしておきたいのは、サインが見えることと、「愛情が足りなかった」と決まることは、同じではない、ということです。
愛情不足のサインと言われるもの
次のような姿が、「愛情不足のサイン」として挙げられることがあります。
- わざと困らせる、試すような行動をとる
- 過度に甘える、抱っこや注目をしつこく求める
- 反対に、大人の顔色をうかがい、手がかからなさすぎる
- 「どうせ自分なんて」と、自分を低く見る
- 爪かみ、指しゃぶり、髪をいじるなどの癖が増える
- 感情をあまり出さず、うれしい・悲しいをため込む
- 落ち着きがなかったり、乱暴になったりする
ただし、これらはあくまで「見られることがある」姿です。同じ行動でも、生まれ持った気質、成長の時期、体調、園や学校での出来事など、理由はさまざまです。一つ二つ当てはまっても、それだけで「愛情不足」と決まるわけではありません。
サインは「愛情の量」ではなく「今、何が起きているか」の手がかり
ここで、少し見方を変えてみます。これらのサインは、過去の愛情の量を測るものさし、ではありません。むしろ、「今、この子の周りで何が起きているか」を教えてくれる手がかりです。
試すように見える行動の背景には、不安、環境の変化、言葉にできない疲れなど、いくつもの可能性があります。「私を困らせたいのだ」と決める前に、この行動はいつから増えたのか、その前に何が変わったのかを見てみる。そうすると、責める気持ちが、少しだけ手がかりに変わります。
愛情不足と決める前に、3つ見る
一つのサインだけで判断せず、次の3つを見てみると、背景が見えやすくなります。
- その行動は、いつから増えたのか
- 家でも、園や学校でも起きているのか
- きょうだいの誕生、進級、体調、家族の忙しさなど、直前に変わったことはなかったか
たとえば、下の子が生まれた時期から甘えが増えたのなら、それは愛情不足のしるしというより、環境の変化に揺れているサインかもしれません。いつ・どこで・何が変わったか。この3つが、行動の意味を読みほどく手がかりになります。
そのサインの前に、何が起きていたか
とはいえ、日々のなかで、子どものサインに毎回こたえるのは、簡単ではありません。こたえられなかった自分を、責めたくなることもあると思います。
そんなとき、あなたから余裕を奪っていたものは、何だったでしょうか。眠れない日が続いていた。仕事と家事を一人で抱えていた。気持ちを聞いてくれる相手が、自分にはいなかった。子どものサインが見えていても、受け止める余力がなければ、こたえられない日はあります。それは、愛情がないからではなく、あなたの器が、その日いっぱいだっただけかもしれません。子どもの満たされなさを見るとき、その手前にある、親の満たされなさにも、目を向けてほしいのです。
「足りなかった」と、過去形で決めなくていい
「愛情不足で育った子」という言葉は、まるですべてが過去に決まってしまったかのように響きます。でも、子どもとの関係は、これからも続いていきます。
今日、サインに気づけたなら、明日、少し受け止め方を変えられます。応えることは、求められたとおりにすぐかなえることとは限りません。すぐに抱っこできないときは、「今は火を使っているから、終わったら抱っこしよう」と伝え、終わったあとに戻る。求めたとおりにできなくても、気持ちを受け取る方法はあります。「どうせ自分なんて」と言ったら、「そう思ったんだね」と、まず気持ちを受け取る。すぐに様子が変わらなくても、「あとで戻ってきてくれた」という経験を、少しずつ重ねることはできます。過去に足りなかったかを数えるより、これから何を渡せるかを見るほうが、ずっと役に立ちます。
子どもの様子が、ずっと気がかりなとき
サインが強く続いている、表情が乏しい日が長く続く、どう関わっていいか分からない。そんなふうに、一人で抱えきれないと感じたら、専門家の力を借りてかまいません。それは、親として力が足りないからではなく、子どものために選べる、一つの手です。
- 親子のための相談LINE:保護者も、子育てや親子関係について相談できます。
- 児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」:子育ての悩みを、無料で相談できる全国共通の番号です。
よくある質問(FAQ)
下の子が生まれてから、上の子に手が回りません。愛情不足になりますか。
きょうだいが増えれば、一人にかけられる時間が減るのは自然なことです。大切なのは、時間の長さより、短くても「あなたを見ているよ」が伝わる瞬間があること。上の子と二人だけの数分を、ときどき持つ。それを重ねることが、上の子の支えになっていきます。
もう大きくなった子にも、今から間に合いますか。
もう大きくなった子にも、今からできる関わりはあります。年齢が上がっても、子どもは親からの関わりの変化を受け取ります。急に距離を縮めようとしなくても大丈夫です。話を最後まで聞く、否定せずにうなずく。そんな日々の応答を、少しずつ重ねていけます。
サインが当てはまって、落ち込んでいます。
当てはまる姿が見えると、胸が苦しくなりますよね。でも、そのサインに気づけたことは、これから応えていける、ということでもあります。当てはまった数を責める材料にせず、「この行動はいつから増えたのかな」「最近、何か変わったことはなかったかな」と、背景を見る手がかりとして受け取ってみてください。
読み終えたあなたへ
今日、すぐに何かを変えなくてもかまいません。まずは、子どものサインを「できていなかった証拠」ではなく、「今、何が起きているかの手がかり」として見てみる。いつから、どこで、何が変わったか。そう問い直すことが、次に同じ姿を見たときに、かける言葉を少し変えてくれます。
子育てのヒントを、もう少し
子どもとの関わり方や、子育ての悩みとの向き合い方について、グランエンパティアでは発信しています。よかったら、のぞいてみてください。
