「早生まれだからなのか、それとも何か見落としているのか」。答えが分からないまま、家でも園でも、お子さんの様子を気にかけ続けてきたでしょうか。

先にお伝えします。生まれ月によって、ADHDになるかどうかが決まるわけではありません。ただ、日本では、4月1日に近い早生まれの子ほど、学年の中で相対的に幼くなります。そのため、ADHDそのものが多いのではなく、ADHDと診断されやすくなる可能性が、研究で指摘されています。この記事では、その「相対年齢効果」と呼ばれる現象を、根拠とともに、できるだけ正確にお話しします。

研究が示していること——学年で相対的に幼い子は、診断されやすい

アメリカで行われた大規模な研究(2018年、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)では、40万人以上の子どものデータが分析されました。9月1日を入学の区切りとする州では、学年の中でいちばん幼い8月生まれの子は、いちばん年長にあたる9月生まれの子に比べて、ADHDと診断される割合が高いことが示されました。一方で、ぜんそくや糖尿病など、生まれ月と関係しないはずの病気には、そうした差は見られませんでした。

日本では、一つの学年は4月2日から翌年4月1日までの生まれで区切られます。つまり、1月1日から4月1日までに生まれた「早生まれ」の子が、同じ学年の中で、相対的にいちばん幼いことになります。

なぜ、そうなるのか——「相対年齢効果」

同じ学年でも、4月生まれの子と、翌年3月生まれの子とでは、月齢には最大でほぼ1年の差があります。幼い時期の1年の差は、とても大きなものです。

学年の中で相対的に幼い子は、身体も、気持ちをコントロールする力も、まだ発達の途中にあり、じっと座っていられなかったり、注意がそれやすかったりします。それは、月齢を踏まえると自然な姿である場合もあります。ところが、まわりの年長の子と同じ物差しで比べられると、その幼さが「落ち着きのなさ」「不注意」として目立つことがあります。月齢による幼さが、ADHDの特性として受け取られやすいのではないか。これは、相対年齢効果が生じる理由の一つとして考えられています。ただし、なぜ差が生まれるのかが、これ一つに確定しているわけではありません。

言いかえると、これは「その子の中にある問題」というより、「学年という区切りの中で、誰と並べて見られているか」という、外側の条件によって生まれる見え方の差です。同じ子でも、区切りが少しずれれば、「最年少で落ち着かない子」にも、「年長でしっかりした子」にも見えうる、ということです。

「早生まれ=ADHD」ではありません

ここは、はっきりさせておきたいところです。相対年齢効果は、あくまで「大勢のデータをまとめて見たときの傾向」です。「早生まれだから、ADHDになる」わけでも、「早生まれの子は、みんなADHDに見える」わけでもありません。

早生まれの子の多くは、ADHDではありません。そして、ADHDのある子の多くは、早生まれとは限りません。生まれ月は、ADHDを決める要因ではないのです。ですから、「うちは早生まれだから」と、過剰に不安になる必要はありません。

差の理由は、まだ一つに決まっていません

もう一つ、大切なことがあります。個々の研究によって、差の大きさには幅があります。ただ、複数の研究をまとめた分析でも、学年の中で相対的に幼い子ほど、ADHDと診断されたり、薬を処方されたりする割合が高い傾向は確認されています。

一方で、それがすべて「取り違え(誤診)」によるものなのか、なぜ差が生じるのかまでは、まだ一つの答えに決まっていません。ですから、この差は「そういう傾向が報告されている」ものとして受け取り、集団の傾向を、目の前の一人の子に、そのまま当てはめないことが大切です。

それでも気になるときは

一方で、早生まれだからといって、実際の困りごとを「幼いだけ」と片づけてよいわけでもありません。早生まれの子の中にも、支援が必要な子はいますし、その逆もあります。大切なのは、生まれ月で決めつけないことと、困りごとがあるなら相談することの、両方です。

もし気になるなら、児童精神科や小児科、自治体の発達相談の窓口に相談してみてください。相談するときは、その子が学年の中でどの月齢にあたるかも伝えてください。年齢や発達段階、家庭・園・学校での様子を合わせて見てもらうことが大切です。診断のためだけでなく、今の困りごとを軽くするために、専門家を頼ってかまいません。

よくある質問(FAQ)

早生まれの子は、ADHDになりやすいのですか。

「なりやすい」わけではありません。研究で示されているのは、学年の中で相対的に幼い子(日本では早生まれ)が、ADHDと「診断されやすい傾向」がある、ということです。月齢による幼さがADHDの特性として受け取られやすいことが、理由の一つとして考えられています。生まれ月がADHDそのものを引き起こすわけではありません。早生まれ=ADHD、ではありません。

早生まれで落ち着きがないのは、様子を見ていて大丈夫でしょうか。

「早生まれだから」と決めつけて放っておくのも、逆に不安になりすぎるのも、どちらも避けたいところです。月齢による幼さのこともあれば、支援があったほうが楽になる場合もあります。困りごとが続いていたり、本人がつらそうだったりするなら、様子を見るだけにせず、園・学校や専門家に相談してみてください。

相談するとき、何を伝えればいいですか。

「学年の中で早生まれであること」「どんな場面で、どんな困りごとがあるか」を具体的に伝えると、月齢もふまえて見てもらいやすくなります。家庭での様子と、園・学校での様子の両方を共有できると、さらに整理しやすくなります。うまくまとめられなくても、気になっていることをそのまま話して大丈夫です。

読み終えたあなたへ

早生まれのわが子を見て、不安になった日があったかもしれません。学年の中で幼く見えることには、生まれた時期による月齢差も関係しています。それは、その子の力や、あなたの育て方の判定ではありません。生まれ月だけで決めつけず、今、どんな場面で困っているのかを見る。そこから、その子に必要な支えが、少しずつ見えてきます。

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※参考:Layton TJ ほか「Attention Deficit–Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment」(New England Journal of Medicine, 2018)相対年齢効果と発達障害診断に関する系統的レビュー(2018)相対年齢効果に関するメタ分析(2024)

※相談窓口:発達障害者支援センター・一覧(国立障害者リハビリテーションセンター)発達障害ナビポータル

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