片づけても、すぐ散らかる。忘れ物や、うっかりが多い。何から手をつけていいか分からず、気づけば一日が終わっている。つい感情的になって、子どもを強く叱ってしまう。そんな日が続いて、「もしかして、私はADHDなのだろうか」と思ったのかもしれません。

先に、いちばん大切なことをお伝えします。この記事は、あなたを「ADHDです」と判断するためのものではありません。ここでは、世間で「ADHDの母親の特徴」として語られることを見たうえで、それをどう受け止め、どこを頼ればいいかを、一緒に整理していきます。

「ADHDの母親の特徴」として語られる、いくつかの現れ方

まず、世間で「ADHDの母親の特徴」として語られやすいものを見てみます。成人では、目に見える多動が減ったり、内側の落ち着かなさとして現れたりすることがあります。また、女性は不注意の特徴が目立ち、ADHDと気づかれにくい場合があるとされています。母親として語られやすいのは、次のような姿です。

  • 家事と育児を同時に進めようとすると、頭がいっぱいになってしまう
  • 片づけや持ち物の管理、忘れ物に苦労する
  • やることが多いと、どこから手をつけていいか分からなくなる
  • 一つに集中すると、ほかのことが抜けてしまう
  • 思ったことを、つい強い言葉で言ってしまう

いくつも当てはまり、「やっぱり私のことかもしれない」と不安になったでしょうか。

当てはまることがあっても、それだけでADHDとは決まりません

これらの現れ方は、ADHDのある人だけに起きることではありません。睡眠不足が続いているとき、頼れる人がいないとき、余力が尽きているときにも、同じように現れます。だから、いくつ当てはまっても、それが「あなたがADHDだ」という意味にはなりません。

ADHD(注意欠如・多動症)は、子どものころから特性が現れる神経発達症の一つで、不注意や多動性、衝動性といった特徴があるとされています。本人の努力不足や、親の育て方によって起こるものではありません。そして、ADHDかどうかは、チェックリストやインターネットの記事で決められるものではありません。診断には、専門家による詳しい評価が必要です。そこでは、子どものころからの経過や、複数の生活場面での困りごと、睡眠や不安など別の原因の可能性まで、ていねいに確認されます。ここから先は、自分の状態を知り、必要なら相談につなげるための手がかりとして読んでください。

その現れ方は、特性だけが理由とは限らない

同じ「片づかない」「怒鳴ってしまう」でも、その背景はさまざまです。生まれ持った特性が関わっていることもあれば、今の状態——寝不足や心身の疲れ——が関わっていることもあります。さらに、置かれている状況——判断も世話も一人に集中し、頼れる人がいない——が、大きく影響していることもあります。

多くの場合、これらは重なり合っています。だからこそ、「この特徴があるから、私はADHD」とは言い切れません。特性なのか、疲れなのか、負荷の集中なのか。それを見分けるには、あなた一人で抱え込むより、専門家と一緒に整理していくのがいちばんの近道です。

診断名を決める前に、3つだけ振り返ってみませんか

特性なのか、それとも今の疲れや負荷の集中なのかを考えるとき、次の3つが手がかりになります。

  • 同じ困りごとは、子どものころからありましたか。
  • 家庭だけでなく、仕事や人間関係でも起きていますか。
  • 眠れた日や、誰かに家事を任せられた日にも、同じように困りますか。

この答えだけで、ADHDかどうかが決まるわけではありません。ただ、特性なのか、疲れなのか、負荷の集中なのかを、専門家と一緒に整理していくときの手がかりになります。

ADHDは、「親失格」でも「育児の失敗の原因」でもない

もし、あなたに発達の特性があったとしても、それは「親として不適格」という意味ではありません。ADHDのある人は、支援や自分に合った環境・工夫によって、暮らしやすさが大きく変わります。そして、ADHDの有無にかかわらず、支えのなさや、一人への負荷の集中が、日々の困りごとをさらに大きくすることがあります。

ただ、強く言いすぎる日が続き、「このままでは親子ともにつらい」と感じているなら、それは自分を責める材料ではなく、助けを増やす合図です。自分を罰するためではなく、親子を守るために、頼れる先を探していきましょう。

気になるときの、相談先

「もしかして」と思ったときは、一人で判断せず、次のような窓口に相談してみてください。診断は、あなたにレッテルを貼るためのものではなく、必要な支援や工夫につながるための入り口です。

  • 精神科・心療内科(大人の発達障害を扱っているところ):診断や、困りごとへの対処を相談できます。
  • 発達障害者支援センター:本人や家族が相談できる公的な窓口です。地域によって支援内容や利用方法が異なるため、まずはお住まいの地域を担当するセンターにお問い合わせください。
  • 発達障害ナビポータル(国の情報サイト):発達障害についての公的な情報や、相談先を調べられます。
  • お住まいの自治体の保健センターや、かかりつけ医にも相談できます。

気分の落ち込みや不眠が続いているなら、かかりつけ医や、大人の発達障害を扱う精神科などに相談してください。今すぐ誰かに話したいときは、よりそいホットライン「0120-279-338」も利用できます。

「子どもを傷つけてしまうかもしれない」と感じたときは、一人で耐えず、児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」または「189」につながってください。差し迫った危険がある場合は、110または119へ。

よくある質問(FAQ)

ADHDと、疲れや睡眠不足による状態は、どう違いますか。

見た目の困りごとだけで区別するのは難しいです。ADHDの評価では、困りごとが子どものころから続いているか、複数の生活場面に現れているか、生活にどの程度影響しているかを確認します。同時に、睡眠不足や不安、気分の落ち込みなど、似た状態を起こす別の要因も調べます。休むと楽になるかどうかだけで、ADHDかどうかを判断することはできません。気になるときは、自己判断で結論を出さず、専門家に相談してみてください。

どのような状態になったら、受診を考えればいいですか。

「困りごとで、日常生活や子育てに支障が出ている」「長く続いていて、自分ではどうにもしづらい」「気分の落ち込みや不眠も重なっている」。こうしたときは、受診を考えるタイミングです。ADHDかどうかをはっきりさせるためというより、今のつらさを軽くするために、精神科・心療内科や発達障害者支援センターを頼ってかまいません。

もしADHDだったら、子育てはできないのでしょうか。

そんなことはありません。ADHDがあっても、多くの人が子育てをしています。大切なのは、特性を一人で抱えないことです。診断や支援につながることで、自分に合った工夫が見つかったり、周囲の助けを得やすくなったりします。特性の有無にかかわらず、負荷を一人に集めすぎないことが、いちばんの支えになります。

読み終えたあなたへ

ここまで読んで、「やっぱり私はだめなのか」と思っていないでしょうか。もしそうなら、今日決めなくてはいけないのは、診断名ではありません。まずは「何にいちばん困っているか」を一つだけ言葉にして、誰かに渡すことからで大丈夫です。今までの頑張りが足りなかったのではなく、一人で抱える量が多すぎたのかもしれません。

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※相談窓口:発達障害者支援センター・一覧(国立障害者リハビリテーションセンター)発達障害ナビポータル

※参考:国立障害者リハビリテーションセンター「各障害の定義(AD/HD)」

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